実は、中小企業再生支援協議会のような公的な機関は、債権者よりの再生プランを立てる傾向があります。
再生プランを示された債務者が、その条件を飲むことができず、結局は支援を断念するというケースがかなりの割合を占めています。
一方、債務者よりの再生プランは、攻撃的な営業形態を基本としたものになります。
事業継続が前提であり、経営者も従業員もそのままで、その企業のいい面を引き出して利益をあげる方向性で考えます。
そのためには、ある程度の設備投資もやむをえません。
目先の回収を目的としたプランと、真の事業再生をめざすためのプランはまったく違う、という点を理解しておいてください。
再生プランのゴールは事業再生を果たすという点で同じであっても、そこに行き着くまでの方法は、それぞれのケースによって違います。
その企業に合った再生プランを立てるためには、得意とする分野で頑張ってもらう、という点につきます。
多額の債務を抱えている経営者は、資金繰りで手一杯になり、本来の事業がおろそかになっているケースがほとんどです。
また、中小企業の経営者は、会計上の知識や金融機関との交渉については不得手な傾向があります。
営業やモノづくりは得意だけれども、資金繰りや給料の計算、将来の計画を立てるのは大の苦手というタイプです。
不得手にもかかわらず自分だけの力でなんとかしようとするので、借りてはいけないところからおカネを借り、金融機関主導の再建策を鵜呑みにしてさらに追い詰められることになります。
経営者の得意分野に専念してもらうこの不得手な部分をサポートするのが、私たちターンアラウンド・スペシャリストです。
「苦手な交渉は引き受けますので、一時的にここに力を入れて売上を伸ばしてください。
その間に債務返済のリスケをしてつなぎ、立て直すためのプランを練りましょう」と提案私たちが交渉を引き受けた企業は、約半年で売上が3倍になるというデータもあります。
経営者は余計なことを考えずに事業に専念できるので、持ち前の営業力や技術力をいかんなく発揮できるのです。
再生プランを立てるとき、経営者自身はこれからなにをすべきか、私たちはどういう面をサポートしていくのかを明確にします。
そして、そのプランをもとに、私たちターンアラウンド・スペシャリストと経営者の二人三脚による事業再生がスタートするのです。
経営者がなにを残したいと思っているかによっても、再生の方法は変わってきます。
自宅は売却して家族は賃貸住宅に住めばいいけれど事業は残したいという人もいれば、事業はやめるから自宅だけは残したいという人もいます。
なかには、事業と自宅を失ってもいいから投資物件だけを守りたいという人もいます。
工場や倉庫などの事業用物件を残さないと、事業が継続できない企業もあるでしょう。
商売用のクルマや設備を差し押さえられたら、仕事に支障をきたす恐れもあります。
これらすべての材料を一つひとつ考慮して、対策を考えます。
ただし、「守る」という考え方だけでは解決できません。
結果的に大切なものを守ることにはなりますが、守りの姿勢に入ってはいけないということです。
よく、担保をつけたまま不動産を守れないかと相談されますが、これは不可能です。
なにを残し、なにを切り捨てるのか今後も事業を継続するのかどうか、自宅をどうするのか、再生計画を立てる段階で明確にしておくことが大切です。
Yさんのケースでは、不動産管理業は安定した業績を保ち黒字経営ですが、土木業は受注減などにより赤字経営になっています。
結局、Yさんの会社は赤字部門が黒字部門の足を引っ張っている形です。
赤字の土木業は、業界全体が伸び悩んでいる不況型です。
これ以上続けても採算が取れないようなら、廃業する方向性で考えたほうがいいでしょう。
担保として自宅が抵当に入っていますが、同居している母親が高齢のため、Yさんは自宅を手放したくないと考えています。
保証人はYさん自身と長男になっているため、長男の自宅の保全も考慮しなければなりません。
まず当面の間、リ・スケジュールで返済を軽減することにしました。
リ・スケジュールとは、金融機関と交渉し、借入金の契約内容を変更する方法です。
金利のみの返済にしてもらったり、返済回数を増やして1回ごとの返済額を少なくして当面の資金繰りをラクにするものです。
ただし、基本的にリスケは支払いを猶予してもらうだけです。
決して債務が減るわけではなく、根本的に問題が解決できたわけでも再生を果たしたわけでもありません。
この点に注意してください。
金融機関と契約した返済期限や返済金額を守らないため、期限の利益を喪失すること。
しかし一方で、リスケは事業再生における最高の止血剤です。
しかも麻酔も打たず体力もなくさず、堂々と出血を止めることができる唯一の手段です。
短期プライムレートプライムレートとは、業績や財務状況がよく、金融機関が優遇している企業に資金を貸し出す際の金利のこと。
短期プライムレートは短期の貸し出しに適用する金利。
元金は実際に借りた金額ですが、金利はこちらが上乗せして支払うものです。
つまり、金利は金融機関にとっての儲けです。
交渉事の大前提として、相手になにも利益がなければ条件を受け入れてもらえます。
確率は低くなりますが、金利という儲け分を払うからということで応じてもらうわけです。
「返済が苦しいから返せない」とリスケを求めたとしても、それだけでは金融機関は応じてくれません。
金融機関は「苦しいから払えないのはわかったけれども、それではどうやって払ってくれるんですか」と返してきます。
リスケに応じてもらうには、具体的な返済計画をもって交渉にのぞむべきです。
「来月の返済がむずかしい」と申し出ても「そういわずに頑張って払ってくださいよ」で終わり、というのはよくあるパターンです。
こういうときは、返済をやめてしまいます。
そうすると金融機関が慌てて連絡をしてくるので、そこできちんとした文書でリスケを申し出ます。
Yさんの場合は、苦しいながらもなんとか返済していた状態でした。
払えないという姿勢を示してから交渉すれば、たいていのケースはリスケに応じてもらますが、金融機関によっては応じてもらえない場合もあります。
その場合、返済がストップしたら、3か月で金融事故扱いになります。
よく「ブラックリストに載った」という言い方をしますが、正確にはブラックリストというものは存在しません。
返済が滞った情報を「ブラック情報」といい、個人情報を収集して管理している「個人信用情報機関」に事故情報が登録されます。
このブラック情報入りすることを、金融事故扱いといいます。
ブラック情報が登録されたからといって、会社が倒産に追い込まれるわけでもなく、ましてや人格が否定されるわけでもありません。
ただ、今後クレジットカードをつくれなくなる、という可能性があるぐらいです。
金融事故扱いになると「期限の利益を喪失しました、一括弁済してください」という催告書が内容証明郵便で送られてきます。
ローンを組むとき「債務者は一括返済ではなく月々分割で返済できる。
ただし分割にした代わりに貸している側は金利を取る」というシステムになっています。
この分割返済できる権利が「期限の利益」です。
つまり「分割して返す権利がなくなったから、一括で返してください」といってきたわけです。
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